2016年11月13日日曜日

Go West (Pet Shop Boys, Village People)

この曲、意外と深いじゃないか…


 この曲は非常にメジャーで、昨今のスポーツシーンやイベントでよく使われています。
 私にとっては"ジャイアンツ時代の清水選手の入場ソング"というイメージ(世代がバレますね笑)ですので、いつもの独断と偏見で、オリジナルのVillage People版ではなく、Pet Shop Boys版をメインにご紹介します。(解釈に必要不可欠なVillage People版も一緒に掲載します)

 訳自体はいたってシンプルに簡単に片付くのですが、「west」というワードに焦点を当てて考えると以外に深く、ちょっぴりデリケートなところまで考えなければなりません。
 ということで今回は、本気を出して踏み込んだ解釈をしてみます。
 ちょっと長いですが、お付き合いください。
(植民地時代・同性愛・東西社会に関するワンサイドな解釈を含みますが、特定の思想・概念を私が発信する意図はありません。くれぐれもご承知おきください。)

 「簡単でしょ笑」なんて飄々とリクエストをかましてくれた人生の大先輩ですが、今考えると完全に、これは老師の小さな意地悪(笑)と、忙しさに最近自分を見失い気味な私への心遣いでしょうね。

(馴染みの深いPet Shop Boys版)


(オリジナルVillage People版)



【verse1】
(Together)We will go our way
(Together)We will leave some day
(Together)Your hand in my hand
(Together)We will make our plans

(共に行こう)自分の道を進むんだ
(共に行こう)いつか旅立ちの時が来る
(共に行こう)さあ、僕の手を取って
(共に行こう)未来を描こうじゃないか

(Together)We will fly so high
(Together)Tell all our friends good-bye
(Together)We will start life new
(Together)This is what we do

(共に行こう)どこまでだって飛べるさ
(共に行こう)友達にはしばしの別れだね
(共に行こう)新しい人生の始まりだ
(共に行こう)これが僕らの進む道だ


【chorus】
(Go West)Life is peaceful there
(Go West)In the open air
(Go West)Where the skies are blue
(Go West)This is what we're gonna do

(理想郷を目指そう)安らかな日々が待っている
(理想郷を目指そう)自由な空気に包まれて
(理想郷を目指そう)青い空が広がっているんだ
(理想郷を目指そう)それが僕らの進む道だ


【verse2】
(Together)We will love the beach
(Together)We will learn and teach
(Together)Change our pace of life
(Together)We will work and strive

(共に行こう)海辺の暮らしもいいね
(共に行こう)毎日が新鮮な日々さ
(共に行こう)自分の速度で歩むんだ
(共に行こう)コツコツと積み重ねていく日々を

(I love you)I know you love me
(I want you)How could I disagree
(So that's why)I make no protest
(When you say)You will do the rest

(君を愛してる)わかってるよ、君も僕を愛してる
(君が欲しい)この気持ちには逆らえない
(それでいいのさ)君が疲れて立ち止まっても
(そんな時も)僕は君を見守るよ


【chorus】
(Go West)Life is peaceful there
(Go West)In the open air
(Go West)Baby you and me
(Go West)This is our destiny

(理想郷を目指そう)安らかな日々が待っている
(理想郷を目指そう)自由な空気に包まれて
(理想郷を目指そう)一緒に歩むんだ
(理想郷を目指そう)これが僕らの運命さ

(Go West)Sun in wintertime
(Go West)We will do just fine
(Go West)Where the skies are blue
(Go West, this is what we're gonna do)

(理想郷を目指そう)寒い冬も陽はさすよ
(理想郷を目指そう)うまくいくさ
(理想郷を目指そう)青い空が広がって
(理想郷を目指そう、それが僕らの進む道だ)


【bridge】
There where the air is free
We'll be (We'll be) what we want to be
Now if we make a stand
We'll find (We'll find) our promised land

自由な空気に包まれて
ありのまま、在りたい姿で居られるさ
立ち上がることさえできれば
きっと約束の地にたどり着ける


【verse3】
(I know that)There are many ways
(To live there)In the sun or shade
(Together)We will find the place
(To settle)Where there's so much space

(わかってるよ)いろんな生き方があって
(生きていくには)日向の道も日陰の道もある
(共に行こう)きっと見つかるさ
(心落ち着く)のびのびと過ごせる場所が

(Without rush)And the pace back east
(The hustling)Rustling just to feed
(I know I'm)Ready to leave, too
(So that what)We are gonna do

(焦る必要なんてないよ)来た道を戻ってみたりさ
(情熱を失くさずに)質素に暮らしていけばいい
(どうやらそろそろだね)僕も旅立つ準備はできたよ
(これこそが)僕らの進む道だ


【chorus】x3
(What we're gonna do is...)
(Go West)Life is peaceful there
(Go West)Yeah, in the open air
(Go West)Where the skies are blue
(Go West)This is what we're gonna do
(僕らの進む道は…)

(理想郷を目指して)安らかな日々が待っている
(理想郷を目指して)自由な空気に包まれて
(理想郷を目指して)青い空が広がっているんだ
(理想郷を目指して)それが僕らの進む道だ


(Life is peaceful there)
Go West(In the open air)
Go West(Baby you and me)
Go West(This is our destiny)

(安らかな日々を送ろう)
理想郷へ行くんだ(自由な空気に包まれて)
理想郷へ行くんだ(僕ら一緒に)
理想郷へ行くんだ(これが僕らの運命さ)


(Go West)Sun in wintertime
(Go West)We will feel just fine
(Go West)Where the skies are blue
(Go West)This is what we're gonna do

(理想郷を目指そう)寒い冬も陽はさすよ
(理想郷を目指そう)うまくいくさ
(理想郷を目指そう)青い空が広がって
(理想郷を目指そう)それが僕らの進む道だ



「West(西)= 理想郷?」

お気づきの通り、「Go West」というフレーズにお得意のスーパー意訳タイム(笑)が発動しています。
 「West = 理想郷」と訳した理由?しっくりくるからです。それだけです。笑
 ただそれではあまりに乱暴ですので、その理由に関して、グーグル先生に教えてもらった知識をフル動員して3つの観点から考えてみたいと思います。

1.西部開拓時代のテーマ
 「Go West」というフレーズは、19世紀の政治家ホレス・グリーリー(自由共和党の創設者)の「Go west, young man.(若者よ、西へ行け)」という言葉がルーツになっているようです。
 基本的に、故郷を捨て未開の地を「開拓」に行く人々のほとんどは低所得だったり、社会に馴染めなかったり、いわゆる「社会の枠組みから弾かれた人々」だったことは想像に難くありません。(もちろんそうでない人も多かったでしょうが)
 「自分に合った暮らしを求めて」「退屈した日々を打開するため」「一攫千金を目指して」などなど、様々な思いを胸に、未開の地に夢を見、人生をかけて開拓をしていった人々にとって、「我々の進む先には希望がある」と信じること、信じられる何かがあることは、必要不可欠であったことでしょう。
 彼らにとって、「West = 理想郷」であることは、生きるための必然だったのです。

2.同性愛者解放運動のユートピア
 西遊記において、玄奘三蔵法師一行はシルクロードをガンダーラ目指して西へ旅をしました。
 この曲が作られた1970年代のアメリカの同性愛者の大きな流れとして、西部のサンフランシスコがゲイ解放のユートピアとされていたようです。(現代日本の新宿二丁目や堂山あたりがそれに近いかもしれませんね。)
 実際に、オリジナルの生みの親「Village People」のメンバーはほとんどがゲイで、この曲のマーケティング戦略としても、ゲイマーケットをターゲットに、ゲイイメージを表面に出した前衛的なものだったようです。
 時代的に考えても、社会的に圧倒的マイノリティであった彼らにとって、希望の光となる場所を、自由を勝ち取って来た自国の歴史と重ね合わせて西部のサンフランシスコとし「Go West」と称えることに、なんら違和感を感じません。

3.米ソ(東西社会)の対立
 1970年代は、いわゆる冷戦の真っ只中です。
 この解釈に関しては、言わずともMVを見れば一目瞭然ですね。
 (ヒント)
  ・赤いベレー帽をかぶり行進する集団
  ・「鎌と槌」のネオンサイン
  ・自由の女神像
 「自由の国、西側に来いよ」という政治的な意図が丸出しです。

 ご納得いただけましたでしょうか?
 私ごとではありますが、今月末に「East」への転勤が決まりました。
 「忙しいわー」と地獄のミサワばりにドヤ顔をすることが生きがいの私にとっては栄転ですが、東京を離れることは実に寂しく、新天地でうまくやっていけるか不安に思うことばかり。そんなエモい気持ちとは関係なく仕事はどんどんやりがいと責任が大きくなって、ちょっぴり気持ちが張りつめていた最近でしたが、人生の大先輩たる老師のリクエストでこの曲と向き合ってみて、心がすっと軽くなった気がします。
 方角的には真逆ですが、「Go West」の精神で一丁やってやろうと思います!

 歴代最長となってしまった本記事でしたが、最後までお付き合いいただいた皆様、いつも本当にありがとうございます。
 溜まったリクエストたちも、自分のペースで(笑)コツコツ料理していきますので、今後ともよろしくお願い致します。